アルファベットと発音
アルファベット一覧
ポーランド語では以下のアルファベットが使用されます。
| 大文字 | 小文字 | 音価 |
|---|---|---|
| A | a | /a/ |
| Ą | ą | /ɔw̃/ |
| B | b | /b/ |
| C | c | /ts/ |
| Ć | ć | /tɕ/ |
| D | d | /d/ |
| E | e | /ɛ/ |
| Ę | ę | /ɛw̃/ |
| F | f | /f/ |
| G | g | /ɡ/ |
| H | h | /x/ |
| I | i | /i/ |
| J | j | /j/ |
| K | k | /k/ |
| L | l | /l/ |
| Ł | ł | /w/ |
| M | m | /m/ |
| N | n | /n/ |
| Ń | ń | /ɲ/ |
| O | o | /ɔ/ |
| Ó | ó | /u/ |
| P | p | /p/ |
| R | r | /r/ |
| S | s | /s/ |
| Ś | ś | /ɕ/ |
| T | t | /t/ |
| U | u | /u/ |
| W | w | /v/ |
| Y | y | /ɨ/ |
| Z | z | /z/ |
| Ź | ź | /ʑ/ |
| Ż | ż | /ʐ/ |
硬音と軟音
ポーランド語の子音には硬音と軟音の対立があります。
正確に言えば、子音の口蓋化(palatalization)で、口蓋化した子音のことをポーランド語やロシア語では軟子音(soft consonant; spółgłoska miękka)、それ以外の子音のことを硬子音(hard consonant; spółgłoska twarda)と呼びます。
ポーランド語で子音を軟化させるのは"i"です。
“i"は母音/i/を表す他に、直前の子音を軟化させる役割もあります。
たとえば、
- mia /mʲa/
- nio /nʲɔ/
のように、"i"によって子音/m/と/n/が軟化し、それぞれ/mʲ/、/nʲ/となります。
いくつか実際の単語の例を挙げておきます。
太字部分の子音が軟化します。
- mieć /ˈmʲɛtʲ/「持っている」
- piosenka /pʲɔˈsɛn.ka/「歌」
- zmienić /ˈzmʲɛ.nʲitʲ/「変える」
miećのように一音節の中で「子音+i+母音」となっている場合は、"i"は軟音記号としてのみ働き、/i/の発音は残りません。
以下の例のように"i"の後に母音が続かない場合は、子音を軟化させる働きに加えて、/i/の発音も残ります。
- z przyjaciółmi /s pʂɘ.jaˈtʲuw.mʲi/「友人たちとともに」
- nikt /ˈnʲikt/「誰も(〜ない)」
なお、直前に子音がない場合は文字通り/i/と発音します。
- istnieć /ˈist.nʲɛtʲ/「存在する」
- boisz /ˈbɔ.iʂ/「(君は)恐れる」
軟子音を単独で表現したい場合
ポーランド語を表記する上では、いくつかの子音については軟子音を単独で表す必要があり、そのために特別な文字が用意されています。
たとえば、"ni"と書くと/nʲi/となり、/i/の発音がついてきてしまいますが、/nʲ/の音素を単独で表現したい場合ですね。
以下の四つの文字がこのために用意されています。
- ć /tɕ/
- ń /ɲ/
- ś /ɕ/
- ź /ʑ/
硬子音と軟子音の対立は以下のとおりです。
| 硬子音 | 軟子音 |
|---|---|
| c | ć |
| n | ń |
| s | ś |
| z | ź |
Wiktionaryで調べると、ćとńの発音記号はそれぞれ/tɕ/、/ɲ/となっています。
ここまでに挙げた例ではćとńの発音記号をそれぞれ/tʲ/、/nʲ/と表記していますが、ポーランド語でこのように発音するのは厳密には誤りかもしれません。
ロシア語学習者の感覚としては/tʲ/と/nʲ/なのですが、もしかするとこの発音だとロシア語訛りに聞こえるかもしれないです。
実際の発音記号が/tɕ/、/ɲ/などで表記されることから、これらの子音を軟子音とみなしてよいのかもよくわかりません。
ただ、ロシア語と比較した際に、ポーランド語のこれらの子音はロシア語の軟子音と対応しているため、ここでは軟子音とみなします。
| ポーランド語 | ロシア語 | 意味 |
|---|---|---|
| żyć | жить /tʲ/ | 生きる |
| koń | конь /nʲ/ | 馬 |
| osiem | восемь /sʲ/ | 8 |
| ziemia | земля /zʲ/ | 地面 |
ロシア語との比較という観点では、śとźの発音がそれぞれ/ɕ/、/ʑ/となり、ロシア語の/sʲ/、/zʲ/とは差異が大きい気がします。
まあ、もし管理人がロシア語を学習していなかったら、たぶんそれらも全く同じ発音に聞こえていたと思うので、多少変な発音をしても通じないということはないと思います。
二重音字
アルファベットを二つ用いることで、それぞれのアルファベットとは異なる発音を表すことがあります。
このようなアルファベットの組み合わせのことを二重音字(digraph)と呼びます。
ポーランド語の二重音字と発音を以下の表に示します。
| 二重音字 | 音価 | 例 |
|---|---|---|
| ch | /x/ | chleb「パン」 |
| cz | /tʂ/ | cztery「4」 |
| dz | /dz/ | bardzo「とても」 |
| dź | /dʑ/ | dźwięk「音」 |
| dż | /dʐ/ | dżuma「疫病」 |
| rz | /ʐ/ | rząd「行」 |
| sz | /ʂ/ | szkoda「損害」 |
dzとdźはそれぞれ硬子音と軟子音の関係にあります。
たとえば、dziękuję「ありがとう」では、最初のdzがiによって軟化し、dźの発音になります。
有声子音と無声子音
有声子音と無声子音の対立を以下の表に示します。
| 有声子音 | 無声子音 |
|---|---|
| b | p |
| g | k |
| d | t |
| z | s |
| w | f |
| ź | ś |
| dz | c |
| dź | ć |
| dż | cz |
| rz | sz |
| – | ch |
有声子音と無声子音の発音が交代する場合があるので、以下に紹介します。
無声子音の後にwとrz以外の有声子音が続く場合
無声子音は有声化します。
- liczba「数」
- prośba「要求、お願い」
無声子音の後に有声子音wまたはrzが続く場合
wとrzは無声化してそれぞれf、szとなります。
- twarz「顔」
- przyjść「(歩いて)来る」
有声子音の後に無声子音が続く場合
有声子音は無声化します。
- odpowiedź「回答、答え」
- wczoraj「昨日」
語末の有声子音は無声化する
- chleb「パン」
- twarz「顔」
鼻母音ąとę
ąとęはそれぞれ/ɔw̃/、/ɛw̃/と発音される鼻母音です。
これらの母音は語頭には出現しません。
語中に来る場合はそれぞれ/ɔn/、/ɛn/などの発音になることが多いです。
これは単純にその方が発音しやすいからでしょう。
- rząd「行」
- bądź「(君は)〜であれ」(byćの2人称単数命令形)
- zająć「〜を占める」
ęについては、語末に来る場合、通常は/ɛ/と発音されます。
- imię「名前」
- będę「(私は)〜だろう」(byćの1人称単数未来形)
- trochę「少しの」
łとó
łは/w/、óは/u/と発音されます。
ポーランド語には、語源的にはlだが/w/と発音される語、あるいは語源的にはoだが/u/と発音される語があります。
そのような語については、łとóの文字を用いて表します。
- miły「よい」(nice)
- ciało「体」
- bóg「神」
- pójść「(歩いて)行く」
- Łódź「ウッチ」(ポーランド中央部の都市)
ロシア語との比較を以下の表に示します。
| ポーランド語 | ロシア語 |
|---|---|
| miły | милый (milyj)「かわいらしい」 |
| ciało | тело (telo)「体」 |
| bóg | бог (bog)「神」 |
| pójść | пойти (pojti)「(歩いて)行く」 |
アクセントの位置
基本的には最後から2番目の音節にアクセントが来ます。
アクセントがある音節は他の音節よりも強く発音します。
- chłopak「少年」
- dziewczyna「少女」
- język polski「ポーランド語」
格変化で音節が増えたり減ったりすると、アクセントも移動します。
- chłopaka (chłopakの単数生格)
- dziewczyn (dziewczynaの複数生格)
- podręcznik do języka polskiego「ポーランド語の教科書」
いくつかの例外があります。
まず、動詞の過去形について、1人称複数の語尾-śmyと2人称複数の語尾-ścieはアクセントに影響しません。
たとえば、kochać「愛する」の過去形について、アクセントは、
- kochałyśmy「(私たちは)愛していた」
- kochałyście「(あなたたちは)愛していた」
となります。
また、仮定法の語尾についても、アクセントには影響しません。
たとえば、móc「〜できる」の仮定法について、アクセントの例を挙げると、
- mogłabym「(私(女性)は)〜できたらいいのですが」
- mogłybyśmy「(私たちは)〜できたらいいのですが」
-bymや-byśmyの部分が仮定法の語尾で、この部分はアクセントに影響しません。
外来語についても、例外的なアクセントをとる場合があります。
たとえば、prezydent「大統領」という語はドイツ語由来ですが、アクセントはprezydentとなります。
ただしこの場合でも、格変化させる場合のアクセントは規則通りとなります。
(例: prezydenta (単数生格))
その他の外来語の例として、gramatyka「文法」やmuzyka「音楽」などが挙げられます。
最後から3番目の音節にアクセントが来ていますね。
これらの単語はラテン語からの借用語です。
これらの単語では、格変化させる場合でも常に最後から3番目の音節にアクセントが来るようです。
(例: gramatykami (複数造格)、muzyki (単数生格))