動詞の人称変化─タイプ1、4、5

この章では基本的なタイプの動詞の人称変化を紹介します。

ここで採用している動詞の分類は英語版Wiktionaryのものに従っています。
Wiktionaryで使われている分類法はロシアの言語学者アンドレイ・ザリズニャク(Андре́й Зализня́к)氏によって発明されたもので、全部で16個のタイプに分類されています。
詳細についてはWiktionaryのページを参照してください。

不定詞

不定詞は辞書の見出し語になる形です。
多くの動詞の不定詞は-тьで終わります。

  • чита́ть (読む)
  • говори́ть (話す)
  • идти́ ((歩いて)行く)

タイプ1

タイプ1は最も基本的な人称変化です。
このタイプの動詞では不定詞が-тьで終わり、人称変化でеが現れるのが特徴です。

  • чита́ть (読む)
    • (я) чита́ю
    • (ты) чита́ешь
    • (он/она) чита́ет
    • (мы) чита́ем
    • (вы) чита́ете
    • (они) чита́ют
  • слу́шать (聞く)
    • слу́шаю
    • слу́шаешь
    • слу́шает
    • слу́шаем
    • слу́шаете
    • слу́шают
  • зна́ть (知る、わかる)
    • зна́ю
    • зна́ешь
    • зна́ет
    • зна́ем
    • зна́ете
    • зна́ют
  • де́лать (する)
    • де́лаю
    • де́лаешь
    • де́лает
    • де́лаем
    • де́лаете
    • де́лают

タイプ4

このタイプの動詞では不定詞が-итьで終わり、人称変化でиが現れるのが特徴です。

このタイプの動詞では人称変化で力点が移動する語があります。
力点が移動する語については、一人称単数(я)では力点が最後の母音にあり、それ以外では前の母音に力点が移動します。

また、このタイプの動詞では一人称単数(я)で子音の交替が起こることがあります。
一人称単数以外では不定詞と同じ子音を用います。
子音の交替には以下のようなパターンがあります。

交替前の子音交替後の子音
дж
сш
стщ
тч
  • говори́ть (話す、言う)
    • говорю́
    • говори́шь
    • говори́т
    • говори́м
    • говори́те
    • говоря́т
  • проси́ть (頼む)
    • прошу́
    • про́сишь
    • про́сит
    • про́сим
    • про́сите
    • про́сят
  • прости́ть (許す)
    • прощу́
    • прости́шь
    • прости́т
    • прости́м
    • прости́те
    • простя́т

говоритьの人称変化がタイプ4の基本的な例です。
проситьやпроститьでは力点の移動や子音の交替が起こっています。

прошуやпрощуでюではなくуとなるのは、ロシア語の正書法の規則のためです。
ロシア語の正書法ではшюやщюという表記は認められていないため、それぞれшуおよびщуとなります。

タイプ5

このタイプの動詞では不定詞が-етьで終わり、人称変化でиが現れるのが特徴です。
このタイプの動詞でもタイプ4のように人称変化によって力点が変化する場合があります。
また、一人称単数で子音の交替が起こることがあります。

  • смотре́ть (見る)
    • смотрю́
    • смо́тришь
    • смо́трит
    • смо́трим
    • смо́трите
    • смо́трят
  • ви́деть (見る、会う)
    • ви́жу
    • ви́дишь
    • ви́дит
    • ви́дим
    • ви́дите
    • ви́дят
  • веле́ть (命じる)
    • велю́
    • вели́шь
    • вели́т
    • вели́м
    • вели́те
    • веля́т

タイプ1の動詞のように人称変化にеが現れる動詞をまとめて第1変化動詞、タイプ4やタイプ5の動詞のように人称変化にиが現れる動詞をまとめて第2変化動詞と呼ぶこともあります。

目的語─対格

目的語「~を」となる名詞は対格という形になります。
不活動体(生物ではない)男性名詞と中性名詞については対格=主格ですが、女性名詞の場合は形が変化するので注意が必要です。

女性名詞の対格

女性名詞はа、я、ьのいずれかで終わります。
аで終わる名詞ではа→у、яで終わる名詞ではя→юとなります。
ьで終わる名詞では対格=主格となります。

人称代名詞の対格

主格対格
яменя́
тытебя́
онего́ [иво́]
онаеё
мынас
вывас
ониих

егоの発音は[иво]なので注意してください。

例文

  • Я знаю станцию. 「私は駅を知っている」
  • Дети смотрят телевизор. 「子どもたちはテレビを見ている」
  • Вы читаете книгу? — Нет, я читаю журнал. 「あなたは本を読んでいますか?─いいえ、私は雑誌を読んでいます」
  • Я знаю тебя. 「私は君を知っている」
  • Он спрашивает меня. 「彼は私に尋ねる」
  • Вы простите меня? 「あなたは私を許してくれますか?」

спрашивать (尋ねる)は対格を取る動詞です。
日本語だと「~に尋ねる」と言いますが、ロシア語では「~を」を意味する対格を取ります。