動詞の過去形
この章では動詞の過去形について紹介します。
規則的な変化をする動詞
多くの動詞の過去形は、不定詞から-тьを取り除いて過去形の語尾をつけることで作られます。
過去形の語尾は主語となる名詞の性・数によって以下の四つを使い分けます。
主語の性 | 過去形の語尾 |
---|---|
男性 | -л |
女性 | -ла |
中性 | -ло |
複数 | -ли |
以下に具体的な例を挙げます。
不定詞 | 男性過去形 | 女性過去形 | 中性過去形 | 複数過去形 |
---|---|---|---|---|
чита́ть | чита́л | чита́ла | чита́ло | чита́ли |
говори́ть | говори́л | говори́ла | говори́ло | говори́ли |
смотре́ть | смотре́л | смотре́ла | смотре́ло | смотре́ли |
жить | жил | жила́ | жи́ло | жи́ли |
быть | был | была́ | бы́ло | бы́ли |
житьやбытьのように力点が語尾に移動する語もあります。
一つ注意点として、主語がвыの場合は常に複数過去形を用います。
выが単数敬称「あなた」として用いられる場合でも、過去形は複数形を用います。
- Я знал / зна́ла его емя.「私は彼の名前を知っていました」
- Ты знал / зна́ла пра́вду.「君は真実を知っていました」
- Мы вчера́ не читали.「私たちは昨日読書しませんでした」
- Вы знали моё имя?「あなたは私の名前を知っていましたか?」
житьの過去形をнеで否定する場合、女性形以外ではнеに力点が置かれる場合があります。
- не́ жил
- не жила́
- не́ жило
- не́ жили
不規則な変化をする動詞
これまでに登場した動詞の中では、идти́ ((歩いて)行く)が過去形で不規則な変化をします。
不定詞 | 男性過去形 | 女性過去形 | 中性過去形 | 複数過去形 |
---|---|---|---|---|
идти́ | шёл | шла | шло | шли |
- Я шёл в шко́лу, когда́ ты позвони́л мне.「君が電話をかけてきたとき、私は学校へ向かっていた」
ところで、идти́を過去形にした場合、英語のwent「行った」のような意味にはならないので注意してください。
идтиの過去形は「どこかへ歩いて行っている最中だった」というような意味を表します。
これには動詞の体(完了体と不完了体)および定動詞・不定動詞の区別が関係してくるので、別の章で詳しく紹介したいと思います。
「私は昨日学校へ行った」(I went to school yesterday.)という内容をロシア語で表現したい場合、元の文と少しニュアンスが変わってしまいますが、英語のbe動詞にあたるбытьを用いて、「私は昨日学校にいた」(I was in school yesterday.)とすることができます。
- Я вчера был / была в школе.「私は昨日学校にいました」
бытьの過去形
бытьは英語のbe動詞に対応する動詞です。
所有文や存在文で登場したестьは実はбытьの現在形です。
所有文や存在文を過去形にして「AはBを持っていた」「AにはBがあった」といった意味を表したい場合には、бытьの過去形を使用します。
過去形は文の主語であるBの性に合わせたものを使用します。
- У меня был учебник.「私は教科書を持っていた」
- У тебя была хорошая книга.「君はよい本を持っていた」
- У нас были карандаши́.「私たちは鉛筆を持っていた」
бытьの過去形をнеで否定する場合、女性形以外ではнеに力点が来ます。
- не́ был
- не была́
- не́ было
- не́ были
所有文や存在文の否定を過去形にして「AはBを持っていなかった」「AにはBがなかった」といった文を作る場合には、нетの代わりにне́ былоを用います。
Bの性や数にかかわらず、не́ былоを用います。
ロシア語では主格が主語になれる格ですが、所有文や存在文の否定で登場するBは生格にするというルールでした。
生格は主語にはなれないので、所有文や存在文の否定形には主語が存在しないことになります。
このような場合には、中性過去形を用います。
過去形の形はあくまで文の主語である主格の語に合わせたものを用いる、主語が存在しない場合は中性過去形を用いる、ということを覚えておいてください。
- У меня не́ было учебника.「私は教科書を持っていなかった」
- В комнате не́ было Маши.「部屋にマーシャはいなかった」
例文
- Я тогда́ читал книгу.「私はあのとき本を読んでいた」
- Де́ти смотрели ви́део.「子どもたちはビデオを見ていた」
- Вы ра́ньше жили в Москве́?「あなたは昔モスクワに住んでいましたか?」
- Я вчера была в Петербу́рге.「私は昨日ペテルブルグにいました」
- Они шли на ста́нцию.「彼らは駅に歩いて向かっていました」