動詞の体─不完了体と完了体

2024年3月29日

ロシア語の動詞は不完了体と完了体の二つのグループに分けられます。
不完了体と完了体は基本的に二つで対になっています。

不完了体完了体意味
слу́шатьпослу́шать聞く
чита́тьпрочита́ть読む
знатьузна́ть知る、わかる
говори́тьсказа́ть, поговори́ть話す、言う
реша́тьреши́ть決める、解決する
идти́пойти́(歩いて)行く
е́хатьпое́хать(乗り物で)行く
братьвзять取る

слушать – послушать、читать – прочитатьのように、不完了体に接頭辞を付加すると完了体になるもの、говорить – сказатьやбрать – взятьのように全く異なる形になるもの、решать – решитьのように一部の母音が変化するものがあります。

ここではWiktionaryに倣って、不完了体をimpf、完了体をpfと表記します。

不完了体

不完了体(несоверше́нный вид; imperfective)は繰り返される動作や習慣を表し、動作が完了するかどうかではなく、動作が行われるという事実に重きを置く表現です。

  • Я читаю газету каждый день. 「私は新聞を毎日読みます」
  • Он едет в школу на автобусе. 「彼はバスで学校に行きます」

上の二つの文では不完了体の動詞を用いて習慣を表しています。

  • Я не раз читал этот роман. 「私は何度もこの小説を読みました」

この例では不完了体の動詞を用いて繰り返される動作を表しています。

  • Я раньше жил в Москве. 「私は昔モスクワに住んでいました」

この例では動作が完了したかどうかではなく、「住んでいた」という事実を述べています。

また、不完了体は英語の進行形「〜している」「〜していた」にあたる意味を表すことができます。

  • Что ты делаешь? — Я читаю книгу. 「君は何をしていますか?─私は本を読んでいます」
  • Мы слушали музыку. 「私たちは音楽を聞いていました」

不完了体の動詞を接続詞и「そして」(and)で二つ並べると、「AしながらBする」という意味になります。

  • Я читаю книгу и слушаю музыку. 「私は本を読みながら音楽を聴いています」

不完了体の動詞のみが使われる表現がいくつかあります。

  • начина́ть (impf) / нача́ть (pf) + 不完了体 「〜し始める」
  • конча́ть (impf) / ко́нчить (pf) + 不完了体 「〜し終える」
  • не стать (pf) + 不完了体 「〜するつもりはない」
  • никогда́ не + 不完了体 「決して〜しない」「一度も〜しない」

これらの表現を用いた例文を以下に示します。

  • Дети начинают играть в парке. 「子どもたちは公園で遊び始めます」
  • Он кончает пить водку. 「彼はウォッカを飲み終えます」
  • Я не стану говорить по-японски. 「私は日本語を話すつもりはありません」
  • Мы никогда не ку́рим. 「私たちは決して喫煙しません」
  • Мы никогда не кури́ли. 「私たちは一度も喫煙したことがありません」

完了体

完了体(соверше́нный вид; perfective)は一回限りの動作が完了することを表します。

  • Я вчера прочитал этот роман. 「私は昨日この小説を読んだ(読み終えた)」
  • Он пошёл в школу. 「彼は学校へ歩いて向かった」

二番目の例のпошёлはидтиの完了体пойтиの男性過去形です。
完了体を用いることで、「学校へ歩いて向かう」という動作が完了し、学校に到着したことを表しています。
不完了体の過去形を用いて"Он шёл в школу."とした場合、「彼は学校へ歩いて向かっていた、向かっている最中だった」という意味になり、学校へは到着していないことを暗に示しています。

英語の"He went to school yesterday."をロシア語に訳す場合、一つの案としては、"Он вчера пошёл в школу."とすることができます。
ただし、идтиとпойтиは定動詞というグループに属しており、この例文では、学校に行ったまま戻ってきていないことを暗に示しています。

学校に行って家に帰ってきていることを表すためには、対応する不定動詞のходи́тьを用います。

  • Он вчера ходил в школу. 「彼は昨日学校へ行った(そして家に戻ってきた)」

定動詞と不定動詞については別の章で詳しく紹介します。

完了体の動詞の現在形は未来において動作が完了することを表します。

  • Я сегодня прочитаю этот роман. 「私は今日この小説を読み終えます」
  • Ты когда-то узнаешь правду. 「君はいつか真実を知るでしょう」

完了体の動詞をиで二つ並べると「AしてからBする」という意味になります。

  • Я прочитаю книгу и послушаю музыку. 「私は本を読み終えてから音楽を聴きます」

完了体の一人称複数形(мы)は勧誘「〜しよう」という意味を表します。
また、動詞дава́тьの命令形дава́й(те)を用いて同じような意味を表すことができます。
дава́й(те)を用いる場合は以下のようにします。

  • дава́й(те) + 完了体一人称複数形
  • дава́й(те) + 不完了体不定詞

親しい相手に対してはдава́й、それ以外の相手に対してはдава́йтеを用います。

  • Поговорим по-русски. 「ロシア語で話しましょう」
  • Давайте поговорим по-русски. 「ロシア語で話しましょう」
  • Давайте говорить по-русски. 「ロシア語で話しましょう」

不完了体の未来形

完了体については現在形が未来のことを表すと述べました。
しかしながら、不完了体が表す内容についても未来のことを表現したい場合があります。
具体的には、不完了体が表す繰り返される動作や習慣について未来のことを表現したい場合です。
このような場合には、бытьの未来形 + 不完了体不定詞とします。

бытьの未来形は以下のような人称変化を行います。

  • быть
    • бу́ду
    • бу́дешь
    • бу́дет
    • бу́дем
    • бу́дете
    • бу́дут

例文

  • Я буду читать газету каждый день. 「私は新聞を毎日読むだろう」
  • Я буду читать этот роман не раз. 「私はこの小説を何度も読むだろう」
  • Мы будем жить в Москве. 「私たちはモスクワに住んでいるだろう」