定動詞と不定動詞

2024年10月26日

移動を表す動詞は定動詞と不定動詞の二つのグループに分けることができます。
定動詞と不定動詞は通常二つでペアになっています。

以下に、代表的な定動詞と不定動詞のペアを挙げます。
なお、以下に示す動詞はすべて不完了体です。

定動詞不定動詞意味
идти́ходи́ть(歩いて)行く
е́хатье́здить(乗り物で)行く
лете́тьлета́ть(飛行機で)行く、飛ぶ
нести́носи́ть運ぶ
вести́води́ть導く
везти́вози́ть(乗り物で)運ぶ
плытьпла́вать泳ぐ、浮かぶ
брести́броди́тьさまよう、歩き回る
лезтьла́зить登る、這う

定動詞

定動詞(конкре́тный глаго́л; concrete verb)は目的地の定まった一方向への移動を表します。

  • Я иду́ в школу.「私は学校に向かっています」
  • Пти́цы летя́т на се́вер.「鳥たちは北に向かって飛んでいます」
  • Иди́ сюда́.「ここに来い」
  • Ты неси́ меня, река́, за круты́е берега́.「河よ私を切り立った岸の向こうへと運んでおくれ」

不定動詞

不定動詞(абстра́ктный глаго́л; abstract verb)は往復する移動または目的地の定まっていない移動を表します。
また、主語の特性を表す場合もあります。

  • Я ходи́л в школу.「私は学校へ行った(そして帰ってきた)」
  • Я брожу́ по го́роду.「私は街を歩き回っている」
  • Пла́вает оди́н кра́сный лист по воде́.「一枚の赤い葉が水面を漂っている」
  • Пти́цы лета́ют, а лю́ди хо́дят.「鳥たちは飛び、人々は歩く」

最初の例では往復する移動を表しています。
学校へ行って(おそらくは家に)帰ってきたことを暗に示しています。

二番目の例ではあてもなく街を歩き回っているということで、目的地の定まっていない移動を表しています。
三番目の例も同様です。

最後の例では、鳥たちは空を飛ぶものであり、人々は地面を歩くものであるという、主語の特性を表しています。

不完了体と完了体

定動詞の不完了体と完了体について、意味の違いを確認しておきます。
ここではидтиとлететьを例に挙げます。

不完了体完了体意味
идти́пойти́(歩いて)行く
лете́тьполете́ть飛ぶ

まずは現在形の例です。

  • Я иду в школу.「私は学校に歩いて向かっている」
  • Я пойду в школу.「私は学校に歩いて向かうつもりだ」
  • Птицы летят на север.「鳥たちは北に向かって飛んでいる」
  • Птицы полетят на север.「鳥たちは北に向かって飛んでいくだろう」

過去形の例も挙げておきます。

  • Я шёл в школу.「私は学校に歩いて向かっていた」
  • Я пошёл в школу.「私は学校に歩いて向かった」
  • Птицы летели на север.「鳥たちは北に向かって飛んでいた」
  • Птицы полетели на север.「鳥たちは北に向かって飛んでいった」

不完了体では目的地へ向かう移動がまさに行われている最中であることを表し、完了体では目的地へ向かう移動が実現される(完了する)ということを表しています。

不定動詞の完了体は出現頻度が低いですが、いくつか例を挙げておきます。

不完了体完了体意味
е́здитьпое́здить(乗り物で)行く
лета́тьполета́ть飛ぶ
  • Я ча́сто летал в Москву как бизнесме́н.「私はビジネスマンとして頻繁にモスクワへ(飛行機で)赴いていた」
  • Я раньше полетал по всему́ ми́ру как тури́ст.「私はかつて(一度)旅行者として世界中を飛び回った」
  • Она ездила неоднокра́тно в этот де́тский дом и учи́ла дете́й чте́нию и письму́.「彼女はその孤児院に何度も通って子どもたちに読み書きを教えていた」
  • Пое́зди по стране́ и найди́ эликси́р бессме́ртия.「国中を旅して不老不死の秘薬を見つけよ」

接頭辞の付加

定動詞と不定動詞の不完了体に接頭辞が付加され、別の意味を表す動詞になることがあります。
定動詞に接頭辞を付加すると完了体、不定動詞に接頭辞を付加すると不完了体の動詞ができます。
なお、接頭辞が付加された派生語には定動詞と不定動詞の区別はありません。

идтиとездитьは接頭辞を付加するときに以下のように形が変化します。

  • идти→-йти
  • ездить→-езжать

以下に定動詞идтиと不定動詞ходитьから派生した動詞の例を挙げます。
これらの動詞はすべて「歩いて」という意味を含んでいます。

接頭辞完了体不完了体意味
в-войти́входи́ть入る
вы-вы́йтивыходи́ть出る
с-сойти́сходи́ть下る
при-прийти́приходи́ть来る
у-уйти́уходи́ть去る
про-пройти́проходи́ть通り過ぎる
вз-взойти́восходи́ть上る
  • Он вошёл в комнату.「彼は部屋に入った」
  • Мо́жно приходить и уходить в любо́е время.「いつでも出入りできる」

移動は表しませんが、на-が付加されたнайти́ / находи́ть「見つける」も頻出です。

  • Она нашла́ эту карти́нку в свое́й комнате.「彼女は自分の部屋でこの写真を見つけた」

定動詞ехатьと不定動詞ездитьから派生した動詞の例も挙げておきます。
こちらは「乗り物で」という意味を含んでいます。

接頭辞完了体不完了体意味
в-въе́хатьвъезжа́ть入る
вы-вы́ехатьвыезжа́ть出る
при-прие́хатьприезжа́ть来る
у-уе́хатьуезжа́ть去る
про-прое́хатьпроезжа́ть通り過ぎる
  • Куда уедешь сегодня?「今日はどこに行くの?」
  • Проезжа́ла ко́нница по степи́ широ́кой, где шуме́л, гуде́л зелёный лист.「音を立てざわめく青い葉の広い草原を騎兵が通り過ぎていった」

定動詞の派生語に限らず、接頭辞вы-で始まる完了体の動詞では、必ず最初のвы-に力点が来ます。

  • Она вы́шла из комнаты.「彼女は(歩いて)部屋から出た」
  • Вы́ключите свет пе́ред сном.「寝る前に明かりを消してください」