定動詞と不定動詞
移動を表す動詞は定動詞と不定動詞の二つのグループに分けることができます。
定動詞と不定動詞は通常二つでペアになっています。
以下に、代表的な定動詞と不定動詞のペアを挙げます。
なお、以下に示す動詞はすべて不完了体です。
定動詞 | 不定動詞 | 意味 |
---|---|---|
идти́ | ходи́ть | (歩いて)行く |
е́хать | е́здить | (乗り物で)行く |
лете́ть | лета́ть | (飛行機で)行く、飛ぶ |
нести́ | носи́ть | 運ぶ |
вести́ | води́ть | 導く |
везти́ | вози́ть | (乗り物で)運ぶ |
плыть | пла́вать | 泳ぐ、浮かぶ |
брести́ | броди́ть | さまよう、歩き回る |
лезть | ла́зить | 登る、這う |
定動詞
定動詞(конкре́тный глаго́л; concrete verb)は目的地の定まった一方向への移動を表します。
- Я иду в школу. 「私は学校に向かっています」
- Пти́цы летя́т на се́вер. 「鳥たちは北に向かって飛んでいます」
- Иди сюда́. 「ここに来い」
- Ты неси́ меня, река́, за круты́е берега́. 「河よ私を切り立った岸へと運んでおくれ」
不定動詞
不定動詞(абстра́ктный глаго́л; abstract verb)は往復する移動または目的地の定まっていない移動を表します。
また、主語の特性を表す場合もあります。
- Я ходи́л в школу. 「私は学校へ行った(そして帰ってきた)」
- Я брожу́ по го́роду. 「私は街を歩き回っている」
- Пла́вает оди́н кра́сный лист по воде́. 「一枚の赤い葉が水面を漂っている」
- Пти́цы лета́ют, а лю́ди хо́дят. 「鳥たちは飛び、人々は歩く」
最初の例では往復する移動を表しています。
学校へ行って(おそらくは家に)帰ってきたことを暗に示しています。
二番目の例ではあてもなく街を歩き回っているということで、目的地の定まっていない移動を表しています。
三番目の例も同様です。
最後の例では、鳥たちは空を飛ぶものであり、人々は地面を歩くものであるという、主語の特性を表しています。
不完了体と完了体
定動詞の不完了体と完了体について、意味の違いを確認しておきます。
ここではидтиとлететьを例に挙げます。
不完了体 | 完了体 | 意味 |
---|---|---|
идти́ | пойти́ | (歩いて)行く |
лете́ть | полете́ть | 飛ぶ |
まずは現在形の例です。
- Я иду в школу. 「私は学校に歩いて向かっている」
- Я пойду в школу. 「私は学校に歩いて向かうつもりだ」
- Птицы летят на север. 「鳥たちは北に向かって飛んでいる」
- Птицы полетят на север. 「鳥たちは北に向かって飛んでいくだろう」
過去形の例も挙げておきます。
- Я шёл в школу. 「私は学校に歩いて向かっていた」
- Я пошёл в школу. 「私は学校に歩いて向かった」
- Птицы летели на север. 「鳥たちは北に向かって飛んでいた」
- Птицы полетели на север. 「鳥たちは北に向かって飛んでいった」
不完了体では目的地へ向かう移動がまさに行われている最中であることを表し、完了体では目的地へ向かう移動が実現される(完了する)ということを表しています。
不定動詞では不完了体しかない動詞が多いですが、一部の動詞には完了体もあります。
不完了体 | 完了体 | 意味 |
---|---|---|
е́здить | пое́здить | (乗り物で)行く |
лета́ть | полета́ть | 飛ぶ |
- Я ча́сто летал в Москву как бизнесме́н. 「私はビジネスマンとして頻繁にモスクワへ(飛行機で)赴いていた」
- Я раньше полетал по ми́ру как тури́ст. 「私はかつて(一度)旅行者として世界中を飛び回った」
接頭辞の付加
定動詞と不定動詞の不完了体に接頭辞が付加され、別の意味を表す動詞になることがあります。
定動詞に接頭辞を付加すると完了体、不定動詞に接頭辞を付加すると不完了体の動詞ができます。
なお、接頭辞が付加された派生語には定動詞と不定動詞の区別はありません。
идтиとездитьは接頭辞を付加するときに以下のように形が変化します。
- идти→-йти
- ездить→-езжать
以下に定動詞идтиと不定動詞ходитьから派生した動詞の例を挙げます。
これらの動詞はすべて「歩いて」という意味を暗黙的に含んでいます。
接頭辞 | 完了体 | 不完了体 | 意味 |
---|---|---|---|
в- | войти́ | входи́ть | 入る |
вы- | вы́йти | выходи́ть | 出る |
с- | сойти́ | сходи́ть | 下る |
при- | прийти́ | приходи́ть | 来る |
у- | уйти́ | уходи́ть | 去る |
про- | пройти́ | проходи́ть | 通り過ぎる |
вз- | взойти́ | восходи́ть | 上る |
移動は表しませんが、на-が付加されたнайти́ / находи́ть 「見つける」も頻出です。
定動詞ехатьと不定動詞ездитьから派生した動詞の例も挙げておきます。
こちらは「乗り物で」という意味を暗黙的に含んでいます。
接頭辞 | 完了体 | 不完了体 | 意味 |
---|---|---|---|
в- | въе́хать | въезжа́ть | 入る |
вы- | вы́ехать | выезжа́ть | 出る |
при- | прие́хать | приезжа́ть | 来る |
у- | уе́хать | уезжа́ть | 去る |
про- | прое́хать | проезжа́ть | 通り過ぎる |
定動詞の派生語に限らず、接頭辞вы-で始まる完了体の動詞では、必ず最初のвы-に力点が来ます。
- Я вошёл в комнату. 「私は(歩いて)部屋に入りました」
- Она вы́шла вон. 「彼女は外に出ました」