格変化─造格
造格(твори́тельный паде́ж; instrumental)は「(道具・手段)で、によって」という意味を表します。
道具を表すので、具格と呼ばれることもあります。
- Я пишу письмо ру́чкой.「私はペンで手紙を書きます」
- Чем ты у́чишься русскому языку́? — Я учу́сь интерне́том.「君は何を使ってロシア語を勉強していますか?─私はインターネットで勉強しています」
造格で「(身分・職業)として」という意味を表すこともあります。
- Кем вы работаете? — Я работаю учителем.「あなたの職業は何ですか?(=あなたは誰として働いていますか?)─私は教師として働いています」
また、様態「〜の状態で」という意味を表すこともあります。
- Он у́мер молоды́м.「彼は若くして(=若い状態で)死んだ」
「〜と(呼ぶ・みなす)」という場合にも造格が用いられます。
- Меня зову́т дурако́м.「私は馬鹿と呼ばれる(=人は私を馬鹿と呼ぶ)」
- Мы счита́ем тру́дным реше́ние э́той пробле́мы.「私たちはこの問題の解決を難しいと考えています」
“Меня зовут A"は「私の名前はAです」という場合にも用いますが、Aが固有名詞の場合は造格ではなく主格を用いるのが普通です。
- Меня зовут Анна.「私の名前はアンナです」
この文を主語を省略せずに書けば、"Они зовут меня Анна."となります。
この場合のониは世間一般の人々を表しており、英語のtheyやフランス語のonのような役割をもっています。
ロシア語では、先の例のように主語を明示する必要がない場合には、主語を省略することができます。
動詞の中には目的語として造格を要求するものがあります。
以下に造格の目的語をとる動詞の一例を挙げます。
- по́льзоваться (impf)「使用する」
- облада́ть (impf)「所有する」
- владе́ть (impf)「所有する、支配する、マスターする」
- управля́ть (impf)「操作する」
- занима́ться (impf) / заня́ться (pf)「学ぶ、従事する」
いくつか例文を挙げておきます。
- Он хорошо́ владе́ет русским языко́м для иностра́нца.「彼は外国人にしてはよくロシア語をマスターしている」
- Ты можешь управлять пого́дой!?「天気を操れるのか!?」
- Э́ля обладает ма́лым для своего́ во́зраста ро́стом.「エーリャは年齢の割に身長が低い」
三つ目の例文にある"для своего возраста"「年齢の割に」は"малый рост"「低い身長」にかかっています。
ロシア語では名詞や形容詞の曲用によって各語の役割がわかるので、この例文のように形容詞と名詞の間にそれを修飾する内容を挟み込むことができます。
余談ですが、Владивосто́к「ウラジオストク」のвлад-はвладетьに由来しており、「東方を支配する街」を意味する地名になっています。
「AはBである」(現在形)ではBを主格としますが、「AはBだった」(過去形)と「AはBだろう」(未来形)ではBを造格にするのが普通です。
- Я студент.「私は学生です」
- Я был студентом.「私は学生でした」
- Я бу́ду студентом.「私は学生でしょう」
形容詞についてその意味を限定する(詳細を述べる)場合に造格が使われることがあります。
- изве́стный го́род「有名な街」
- изве́стный свои́м средневеко́вым за́мком го́род「中世の城で有名な街」
なお、изве́стныйのтは発音されません。
時や季節を表す語を造格にして、「〜に」という意味を表すこともあります。
- у́тро→у́тром「朝に」
- день→днём「昼に」
- ночь→но́чью「夜に」
- весна́→весно́й「春に」
- ле́то→ле́том「夏に」
- о́сень→о́сенью「秋に」
- зима́→зимо́й「冬に」