ニュートン近似

2023年4月15日

アインシュタイン方程式に出てくる係数$\kappa$を具体的に求めることを考えます。
このとき、係数$\kappa$によってニュートン力学における重力ポテンシャル$\phi$が正しく記述されるようにしたいです。

ニュートン力学が成り立つような条件下では、微小量$h_{\mu\nu}$を用いて、計量$g_{\mu\nu}$が以下のように表されると仮定します。
平坦時空$\eta_{\mu\nu}$からのずれが小さく、微小量$h_{\mu\nu}$を用いて計量$g_{\mu\nu}$を表すことができる、という考えです。

$$ g_{\mu\nu}=\eta_{\mu\nu}+h_{\mu\nu} $$

天下り的ですが、係数$\kappa$を求めるためには$h_{00}$の値が必要です。
ここでは、$h_{00}$を求めていきたいと思います。


測地線方程式

$$ \frac{d^2x^{\sigma}}{d\tau^2}+\Gamma^{\sigma}_{\rho\nu}\frac{dx^{\rho}}{d\tau}\frac{dx^{\nu}}{d\tau}=0 $$

を4元速度を用いて表すと、

$$ \frac{du^{\sigma}}{d\tau}+\Gamma^{\sigma}_{\rho\nu}u^{\rho}u^{\nu}=0 $$

となります。

4元速度に$mc$をかけると4元運動量になるので、

$$ \begin{align*} &(mc)^2\frac{du^{\sigma}}{d\tau}+(mc)^2\Gamma^{\sigma}_{\rho\nu}u^{\rho}u^{\nu}=0 \\ &\Leftrightarrow \frac{dp^{\sigma}}{d\tau}\cdot mc+\Gamma^{\sigma}_{\rho\nu}p^{\rho}p^{\nu}=0 \\ &\Leftrightarrow \frac{dp^{\sigma}}{d\tau}=-\frac{1}{mc}\Gamma^{\sigma}_{\rho\nu}p^{\rho}p^{\nu} \end{align*} $$

ミンコフスキー空間では、

$$ ds^2=\eta_{\mu\nu}dx^{\mu}dx^{\nu}=-(cdt)^2+dx^2+dy^2+dz^2 $$

と表されます。
一般相対性理論で考える歪んだ時空では計量$g_{\mu\nu}$がミンコフスキー計量$\eta_{\mu\nu}$からずれますが、質点の速度が十分に遅く、時間$cdt$の間の移動距離が無視できる場合には、

$$ ds^2\approx g_{00}(cdt)^2 $$

と近似できます。

$ds$と固有時間$d\tau$の間には$d\tau^2=-ds^2$という関係があるので、$d\tau^2 \approx -g_{00}(cdt)^2$より、$d\tau=\sqrt{-g_{00}}cdt$

これを用いると測地線方程式は、

$$ \frac{dp^{\sigma}}{dt}=-\frac{\sqrt{-g_{00}}}{m}\Gamma^{\sigma}_{\rho\nu}p^{\rho}p^{\nu} $$

と表せます。
速度が十分遅い場合には、測地線方程式はニュートンの運動方程式に似た形になり、右辺が力を表していると考えられます。

ニュートン近似を行うためにさらに条件を追加します。

  1. 重力場は強くない
  2. 重力場は時間的に変化しない
  3. 質点の速度は光速に比べて十分遅い

条件1は$g_{\mu\nu}$と$\eta_{\mu\nu}$の差がわずかで、微小量$h_{\mu\nu}$を用いて$g_{\mu\nu}=\eta_{\mu\nu}+h_{\mu\nu}$と表せることを意味します。

条件2は$g_{\mu\nu}$の時間微分が0、すなわち$\frac{\partial g_{\mu\nu}}{\partial x^0}=0$であることを意味します。

条件3より、4元速度は$u^{\mu}=(\gamma,\gamma\frac{v^i}{c})=(1,0)$、4元運動量$p^{\mu}=mcu^{\mu}=(mc,0)$と表せます。

これらの条件を用いると、先程の式の右辺は、

$$ \begin{align*} F^i&=-\frac{\sqrt{-g_{00}}}{m}\Gamma^{\sigma}_{\rho\nu}p^{\rho}p^{\nu} \\ &=-\frac{\sqrt{-g_{00}}}{m}\Gamma^{\sigma}_{00}p^0p^0 \\ &=-\sqrt{-g_{00}}mc^2\Gamma^{\sigma}_{00} \\ &=-\sqrt{-g_{00}}mc^2\cdot\frac{1}{2}g^{\sigma\alpha}(\frac{\partial g_{0\alpha}}{\partial x^0}+\frac{\partial g_{0\alpha}}{\partial x^0}-\frac{\partial g_{00}}{\partial x^{\alpha}}) \\ &=-\sqrt{-g_{00}}mc^2\cdot\frac{1}{2}g^{\sigma\alpha}(-\frac{\partial g_{00}}{\partial x^{\alpha}}) \\ &=\sqrt{-g_{00}}mc^2\cdot \frac{1}{2}(\eta^{\sigma\alpha}+h^{\sigma\alpha})\frac{\partial(\eta_{00}+h_{00})}{\partial x^{\alpha}} \\ &=\sqrt{-g_{00}}mc^2\cdot \frac{1}{2}(\eta^{\sigma\alpha}+h^{\sigma\alpha})\frac{\partial h_{00}}{\partial x^{\alpha}} \\ &=\sqrt{-g_{00}}mc^2\cdot\frac{1}{2}(\frac{\partial h_{00}}{\partial x^{\sigma}}+h^{\sigma\alpha}\frac{\partial h_{00}}{\partial x^{\alpha}}) \end{align*} $$

$h^{\sigma\alpha}\frac{\partial h_{00}}{\partial x^{\alpha}}$は2次の微小量になるので捨ててしまいます。

$$ \begin{align*} F^i&=\frac{1}{2}\sqrt{-g_{00}}mc^2\frac{\partial h_{00}}{\partial x^{\sigma}} \\ &=\frac{1}{2}\sqrt{-\eta_{00}-h_{00}}mc^2\frac{\partial h_{00}}{\partial x^{\sigma}} \\ &=\frac{1}{2}\sqrt{1-h_{00}}mc^2\frac{\partial h_{00}}{\partial x^{\sigma}} \end{align*} $$

$\sqrt{1-h_{00}}$を$h_{00}$の1次の項までマクローリン展開します。

$$ F^i=\frac{1}{2}(1-\frac{1}{2}h_{00})mc^2\frac{\partial h_{00}}{\partial x^{\sigma}} $$

2次の微小量は捨ててしまいます。

$$ F^i=\frac{1}{2}mc^2\frac{\partial h_{00}}{\partial x^{\sigma}} $$

ニュートン力学では、ポテンシャルを$\phi$で表したときに、

$$ F^i=-m\frac{\partial \phi}{\partial x^i} $$

となります。

これを先程の式と比較すると、

$$ \frac{1}{2}mc^2\frac{\partial h_{00}}{\partial x^i}=-m\frac{\partial \phi}{\partial x^i} $$

したがって、

$$ h_{00}=-\frac{2}{c^2}\phi $$

とすることで、二つの式が一致することがわかります。