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2024年2月18日

ちょうど八時に僕はフロックコートを着て頭は少し上げたクイッフにして、公爵夫人の住む平屋の前庭に入った。召使いの老人がむすっとした様子で僕を見て、気が進まない様子でベンチから腰を上げた。居間では楽しげな声がしていた。僕はドアを開けると驚いて後ずさった。部屋の真ん中、椅子の上に、公爵令嬢が立っていて、前に男性用の帽子を抱えていた。椅子の周りには五人の男が集まっていた。彼らは手を帽子の中に入れようとしていて、令嬢は帽子を上の方に上げて激しく振っていた。僕を見ると、彼女は声を上げた。

「待って、待って!新しいお客さんよ、彼にも札をあげて」そう言うと、さっと椅子から飛び降りて、僕のコートの襟の端っこを掴んだ。「こっちに来て」彼女は言った。「何を突っ立ってるの?皆さん(Messieurs)、紹介させて、こちらはヴォリデマールさん、お隣さんの息子さんよ。」「それから」僕の方を向いて客たちを順番に指差しながら付け足した。「マレフスキー伯爵、医者のルーシンさん、詩人のマイダーノフさん、退役大尉のニルマツキーさんとベロヴゾーロフさん、ベロヴゾーロフさんにはもうお会いしてるわね。皆さん仲良くしてね。」

僕は大層当惑して、誰にもお辞儀さえしなかったほどだ。医者のルーシンには見覚えがあって、まさにその浅黒い顔をした男で、庭で容赦なく僕に恥をかかせた男だ。残りの人たちは初対面だった。

「伯爵!」ジナイーダは続けた。「ヴォリデマールさんに札を書いて」

「それは不公平です」軽いポーランド訛りで伯爵は言い返した。とても見た目がよくお洒落な格好をした茶髪の男で、表情豊かな茶色い目をして、小さな色白の鼻で、小さな口の上には薄くひげを生やしていた。「彼は私たちのファント(くじ引きで決められた面白芸を披露するゲーム)に参加していなかったじゃないですか。」

「不公平だ」そう繰り返したのは、ベロヴゾーロフと、退役大尉と呼ばれた男だ。この男は四十歳くらいで、醜いほどしみがあって、黒人みたいな巻き毛で、猫背で、脚は曲がっていて、肩章のついていない軍服のコートを着て、胸元は開いていた。

「札を書いて、そう言ってるでしょ」令嬢は繰り返した。「何の反乱なの?ヴォリデマールさんは初めてなんだから、今日は彼は特別扱いよ。文句言わないで、書いて、そうしてほしいの。」

伯爵は肩をすくめたが、諦めたように頭を傾け、羽ペンをその白い、いくつかの指輪で飾られた手に取り、紙の切れ端をちぎってそれに書き始めた。

「少なくともヴォリデマール氏に説明してもよろしいかな、どういうことなのかを」嘲笑うような声で言い出したのはルーシンだった。「さもなくば彼は全く途方に暮れてしまいますよ。わかりますか、お若い人、我々はファントをしているのです。令嬢が罰を考えて、当たりの札を引いた人は、令嬢の手にキスをする権利を得るというわけです。わかりますか、私の言っていることが?」

僕はただ彼を見て五里霧中といった様子で立ち尽くしていたが、令嬢は再び椅子に跳び乗って再び帽子を振り始めた。皆彼女の方に手を伸ばした。僕もそれに続いた。

「マイダーノフさん」と令嬢が言ったのは、背の高い男で、痩せた顔をして、見えているのかわからないような小さな目をして、並外れた長い黒髪だった。「あなたは、詩人として、広い心をもって札をヴォリデマールさんに譲ってあげなさい、彼が一回じゃなくて二回のチャンスを得られるように。」

だがマイダーノフは断るように頭を振って髪をはためかせた。僕は皆の後に帽子に手を入れて、札を取って開いた…。神様!何が起きたのか、札に書かれた「キス」という単語が僕の目に入った!

「キス!」僕は不意に声を上げた。

「ブラボー!彼の勝ちね」令嬢は調子を上げて言った。「わたしうれしい!」─彼女は椅子から下りて、明るく甘く僕の目を覗き込んできたので、僕の心は躍った。─「あなたはうれしい?」彼女は僕に尋ねた。

「僕…?」僕はぶつぶつと言った。

「俺に札を売ってくれないか?」ちょうど僕の耳の上で衝動的に声を出したのはベロヴゾーロフだった。「百ルーブルやるよ。」

僕が憤慨した視線で軽騎兵に答えたので、ジナイーダは手の平を叩き始めて、ルーシンは「すばらしい!」と声を上げた。

「だが」彼は続けた。「私は、司会として、すべてのルールが実行されるのを見届ける必要があります。ヴォリデマールさん、片膝を床につけてください。そういう決まりなのです。」

ジナイーダは僕の前に立って、少し頭を横に傾けた。僕のことをよりよく見られるようにするためだろうか。それから改まった様子で僕に手を差し出した。僕の目にはもやがかかったようだった。僕は片膝立ちをしたかったが、両膝をついてしまった。─それから大層ぎこちなく唇でジナイーダの指に触れたので、鼻の端を彼女の爪で軽く引っ掻いてしまった。

「よろしい!」ルーシンが叫んで、僕が立ち上がるのを助けてくれた。

ファントは続いた。ジナイーダは僕をそばに座らせた。彼女の思いつく罰が尽きることはなかった。彼女の思いついた罰の中に、「像」というのがあった─土台に醜いニルマツキーを選んで、彼にうつ伏せになって、さらには頭を胸に埋めるように命じた。笑い声が止むことは一瞬もなかった。僕は、一人ぼっちで真面目に教育された少年で、地主のまともな家で育ったものだから、このどんちゃん騒ぎすべて、この無礼講でほとんど暴力的といってもよい陽気さ、見知らぬ人々とのこのかつてない交わりが、こうして僕の頭の中に飛び込んできた。僕はただワインを飲んだように酔っ払った。僕が他の誰よりも大きな声でげらげら笑って喋り始めたので、年老いた公爵夫人さえ、話し合いのために呼ばれたイヴェルスキー門の低級役人か何かと隣の部屋で席に着いていたが、出てきて僕を見た。だが僕は大層幸せに感じており、世で言われるように、馬耳東風、傍若無人といった感じで、誰の嘲笑も誰の歪んだ視線も気にしなかった。ジナイーダは僕をひいきにし続け、自身のそばから僕を離さなかった。ある罰で僕は彼女の隣に座ることになって、同じシルクのプラトークで覆われて、彼女に「自分の秘密」を言わなければいけなかった。今も覚えているが、僕たち二人の頭が気づけば突然、風通しの悪い、半透明の、いい香りのする暗がりにあって、この暗がりの中で彼女の目が近くて柔らかく輝いていて、その開いた唇の呼吸は熱くて、歯が見えて、彼女の髪の毛の先がくすぐったくて焼けるようだった。僕は黙った。彼女は神秘的でずる賢い笑顔を見せ、ついには僕にささやいた。「ねえ、何?」僕は赤面して笑うだけで、顔をそらして、息をするのもやっとだった。僕たちはファントに飽きて、あやとり遊びを始めた。神様!僕の感じた喜びはいかほどのものだったろう、僕がぼーっとしていると、彼女は僕の指を強く鋭く叩いたのだ。それから僕がわざとぼーっとしているふりをすると、彼女は意地悪をして僕の差し出した手に触れないのだ!

この晩の間にやったことはまだまだある!ピアノは弾いたし、歌ったし、踊ったし、ジプシーのテントを作ってみたりもした。ニルマツキーに熊の格好をさせて塩の入った水を飲ませることもあった。マレフスキー伯爵は色々なトランプの手品を見せたが、トランプをシャッフルして、手品の切り札をすべて相手に配ってしまい、そのことでルーシンは「彼を祝福する栄に浴した。」マイダーノフは自身の「殺人者」という詩の一節をいくつか僕たちに読んで聞かせた(内容はロマンティシズムの極みだった)が、彼はそれを真っ赤な大文字で書かれた黒い表紙をつけて出版するつもりだった。イヴェルスキー門の低級役人の膝から帽子を盗んで、帽子を返す代わりにコサックダンスをさせたりもした。年老いたヴォニファーチーに女性用の帽子をかぶせて、令嬢は男性用の帽子を身に着けた…。数えればきりがない。ただ一人ベロヴゾーロフは隅でじっとしているばかりで、顔をしかめて怒っていた…。時々彼の目は血走って、全身を赤くして、今にも僕たち全員に飛びかかって僕たちを木片みたいに四方八方に投げ飛ばすような感じだったが、令嬢が彼に視線をやって指で脅すと、彼はまた元いた隅に戻るのであった。

僕たちはついに力尽きた。公爵夫人はと言えば、自分で言っていたが、交渉は順調─叫び声は全く気にしていなかった─とはいえ彼女も疲れを感じて休みたかったのだ。夜の十二時過ぎに夜食が出された。古くて乾いたチーズのかけらと、細切れのハムが入った何か冷めたピロシキがあったが、僕にはこれらがどんなパテよりもおいしそうに見えた。ワインは一瓶だけだったが、これは何か不思議な感じで、暗い色をして、首のところは膨らんでいて、中に入っているワインはピンクの色味を発していた。このワインは誰も飲まなかった。疲労感と幸福感でぐったりとして、僕は平屋を後にした。帰りしなにジナイーダは僕の手をぎゅっと握ってそれからまた謎めいた微笑みを見せた。

興奮冷めやらぬ僕の顔に重くどんよりとした夜のにおいがした。雷雨になりそうだった。空では黒い雲が大きくなってゆっくりと動いていた。その煙のような輪郭が変わっていくのが見えた。風は休むことなく暗がりの木々を揺らしていて、どこか遠く空の向こう側で、まるで自分自身に語りかけるように、雷の憤ったかすかな音が鳴っていた。

裏口を通って僕は自分の部屋に向かった。僕の使用人は床で寝ていて、僕は彼をまたいで行かなければならなかった。彼は目を覚まし、僕を見て伝えた。母はまた僕に対して怒っていて、また僕のところに自分を遣わせたがったが、父が母を引き止めたのだと。(僕は寝るときにいつも母にお休みを言って祝福してもらっていた。)どうすることもできなかった!

僕は使用人に自分で着替えをしてから横になると言い、明かりを消した。しかし僕は着替えをせず横にもならなかった。

僕は椅子に腰掛けて長いこと魔法にかけられたように座っていた。僕が感じていたのは、新しくて甘美だった…。僕は少し自分の周りを見回しながら身動きはせずに座り、ゆっくりと呼吸をして、時が経つにつれて黙って思い出し笑いをしたり、その考えのせいで体の中から寒気を感じたりした。僕は恋に落ちたのだ、それが彼女なのだ、それが恋なのだ。ジナイーダの顔が僕の前の暗がりで静かに揺れ動いていた─揺れ動いて流れ去ることはなかった。彼女の唇にはいつも同じ謎めいた微笑みがあって、その目は少し横から僕を見ていて、問いかけるような、考え込んでいるような、そして優しい感じで…。僕が彼女と別れたあの瞬間のように。ついに僕は立ち上がって、つま先立ちをしてベッドに向かい、注意深く、服は脱がずに、枕に頭を乗せた。鋭い動きをすると僕の頭を満たしているものを妨げてしまうと恐れたかのようだった…。

僕は横になったが、目を閉じることさえなかった。すぐに気づいたが、僕の部屋に向かって絶えず何かかすかな反射光が差し込んできていた。僕は少し体を起こして窓に視線をやった。窓の桟が神秘的にぼんやりと白んだガラスからはっきりと浮かび上がっていた。「雷だ」─僕は思った─まさに雷は光っていたのだが、それが通り過ぎたのはとても遠くで、雷の音は聞こえなかった。空では絶えず明るくはない、長い、枝分かれしたような稲妻が走るだけだった。稲妻の光といっても、死にかけの鳥の羽みたいに震えてけいれんするくらいだった。僕は立ち上がって、窓の方に近づいて、朝までそこに立って過ごした…。稲妻は片時も止むことがなかった。世で言うように、「雀の夜」だった。僕は見ていた、静まり返った砂っぽい平地を、暗く広がるネスクーチュヌイ庭園を、遠くの建物の黄色っぽいファサードを。ファサードはまるでかすかな閃光の一つ一つに合わせてたじろいでいるようだった…。僕は見ていた─目を離すことができなかった。この静まり返った稲妻が、この控えめな輝きが、僕の中でも瞬く静かに秘めた感情の発作に答えているようだった。朝の始まりだった。空のいくばくかを緋色に染めて夜明けがやってきた。太陽が近づくにつれて稲妻は絶えず淡い色を発しながら止んでいった。稲妻のたじろぎはどんどん少なくなっていき、ついには姿を消した。稲妻は酔いを覚ますような、疑念を晴らすような、新たに始まった一日の光に沈んでいったのだ…。

僕の中にあった稲妻も姿を消した。僕は大変な疲労と静寂を感じた…。だがジナイーダの姿は祝福するように僕の心に浮かび続けていた。それ自体が、その姿だけが、心のなだめであるように思えた。湿地の芝生から飛び去った白鳥のように、まわりにいる他の醜い仲間たちから抜きん出て、僕は、眠りに落ちながら、最後には別れのような何でも信じてしまうような愛慕をもってそれを抱きしめた…。

ああ、穏やかな感情、柔らかな音、触れ動かされた心の優しさと静けさ、恋という初めての感情の溶けていくような喜び─あなたはどこにいるの、あなたはどこにいるの?