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2024年7月29日

公爵夫人は約束通り母を訪ねて、母は公爵夫人を気に入らなかった。僕は母と公爵夫人が会ったときにはその場にいなかったが、食事のときに母が父に話していた。この公爵夫人ザセキナというのはとても低俗な女(une femme très vulgaire)で、セルゲイ公爵のところで彼女のために懇願してくれと大層しつこくせがんで、いつも何か裁判と事柄──お金まわりの醜い裁判(des vilaines affaires d’argent)──を抱えていて、些細な裁判だが立派に振る舞う必要があるのだと。母は、しかしながら、公爵夫人を娘とともに明日の夕食に呼んだと付け足した(「娘とともに」という言葉を耳にして、僕は皿で鼻を覆った)。結局のところ隣人であり、名のある人だから、というのが理由である。これに関して父が母に説明したところでは、今しがたこの女性がどのような人であったか思い出したという。父は若い頃今は亡きザセキン公爵を知っていた。公爵は秀でて教養があるものの、空虚で馬鹿な男で、パリに長く住んでいたことから世間では<パリジャン>(le Parisien)と呼ばれていた。彼は大層裕福だったが、全財産を賭けで失って──なぜだかはわからないが、たぶん金のためではないだろうか──それにしても、もっとましなのを選べただろうに──父は付け足して冷たく笑った──どこかの低級役人の娘と結婚して、結婚してからは、投資に手を出してついには身を滅ぼしてしまった。

「お金を貸してくれって言ってくるんじゃないの」母が指摘した。

「それはかなりありうる話だ」落ち着いて父が言った。「フランス語は話すのか?」

「ひどいものよ。」

「ふむ。まあ、それはどうでもいい。君は確か僕に言ったよね、夫人の娘も呼んだって。娘は大層かわいらしくて教養のある女の子だと聞いたよ。」

「へえ!とすると、母親には似なかったのね。」

「父親にもね」父が言い返した。「あいつも教養はあったが、馬鹿だったよ。」

母はため息をついて考え込んだ。父は黙った。僕はこの会話の間とてもぎこちなく感じていた。

夕食の後僕は庭に向かったが、ライフルは持っていかなかった。僕は「ザセキン家の庭」には近づかないと心に決めていたが、抗いがたい力でそこに向かってしまった──そして無駄足ではなかった。柵に近づくとすぐに、ジナイーダの姿が見えた。今回は彼女は一人だった。彼女は手に本を持って、ゆっくりと小道を歩いていた。彼女は僕に気づいていなかった。

僕は彼女を見送るところだったが、突然考え直して咳をした。

彼女は振り返ったが、立ち止まることはなかった。丸い麦わら帽子についている幅広の青いリボンを片手に持って振っていた。彼女は僕を見ると、静かに微笑んで、再び視線を本に向けた。

僕は略帽を脱いで、その場で少し顔にしわを寄せて、重い心持ちで立ち去った。<彼女にとって僕は何だろう?>(Que suis-je pour elle?)──僕は(なぜかはわからないが)フランス語で思った。

聞き覚えのある足音が僕の後ろで聞こえた。僕は振り返った──僕の方に向かってそのすばやく軽い足取りでやってきたのは父だった。

「あれが公爵令嬢か?」父が僕に尋ねた。

「公爵令嬢です。」

「もしかして彼女を知っているのか?」

「今日の朝公爵夫人のところで会いました。」

父は立ち止まって、鋭くかかとで向きを変えて、後ろに歩いていった。ジナイーダの横に行くと、父は丁寧にお辞儀をした。彼女もお辞儀をしたが、その顔には少しの驚きがないというわけではなく、本を下げた。僕は彼女が目で父を追う様子を見た。僕の父はいつも大層お洒落で、独特で、それでいて簡素な服装をしていたが、これほどまでに彼の姿がしゅっとして見えたことはなかったし、これほどまでに美しく彼の灰色の帽子がその少し薄くなった巻き毛に乗っていることはなかった。

僕はジナイーダのところに向かおうとしたが、彼女は僕の方に視線を向けることさえなく、再び本を少し上げて立ち去った。