速度の合成則

2023年4月15日

静止系に対して速度$v_1$で運動する慣性系と、その慣性系で速度$v_2$で運動する粒子があるとします。
静止系から見たこの粒子の速度$V=\frac{dx}{dt}$を求めます。

速度$v_1$で走る車から速度$v_2$でボールを投げたとき、静止している観測者からはそのボールの速度がどのように見えるか、という話です。
非相対論的な場合(速度が光速と比べて十分に遅い場合)には$V=v_1+v_2$となりますが、速度が光速に近いような場合には、観測される速度は単純な和ではなくなります。

実際に観測される速度を求めてみます。
ローレンツ変換の式より、以下が成り立ちます。

静止系と速度$v_1$で運動する慣性系について、

$$ \left\{ \begin{align*} cdt&=\gamma_1(cdt_1+\frac{v_1}{c}dx_1) \\ dx&=\gamma_1(v_1dt_1+dx_1) \end{align*} \right. $$

速度$v_1$で運動する慣性系と粒子が静止して見える慣性系について、

$$ \left\{ \begin{align*} cdt_1&=\gamma_2(cdt_2+\frac{v_2}{c}\cdot 0)=\gamma_2cdt_2 \\ dx_1&=\gamma_2(v_2dt_2+0)=\gamma_2v_2dt_2 \end{align*} \right. $$

これらの式より、

$$ \frac{dx}{cdt}=\frac{v_1dt_1+dx_1}{cdt_1+\frac{v_1}{c}dx_1}=\frac{v_1+v_2}{c+\frac{v_1}{c}v_2}=\frac{v_1+v_2}{c(1+\frac{v_1v_2}{c^2})} $$

したがって、

$$ V=\frac{dx}{dt}=\frac{v_1+v_2}{1+\frac{v_1v_2}{c^2}} $$

$v_1,v_2\ll c$の場合には、非相対論的な場合の式$V=v_1+v_2$に一致します。
また、$v_1,v_2\to c \Rightarrow V \to c$となることから、仮に慣性系と粒子がともに光速で運動していたとしても、観測者から見える速度が光速を超えることはないことがわかります。